田植前後の管理について

田植前後の管理について

本年も田植の時期になりました。次の項目にある基本技術を励行し、実り多き秋を迎えるようにしましょう。

1 育苗期の管理

この時期は気象変動が激しいため、苗立枯病や生理障害によるムレ苗(センコウ苗)が発生することがあります。症状が軽微な場合は、田植をすれば回復することがあるので、田植が可能な場合はすみやかに行ってください。
育苗期間が長い場合(1ヶ月以上)、苗の色が全体的に黄色っぽくなった場合は、肥切れの可能性があります。その際は、床を落水し、苗箱1枚あたり窒素成分で0.5g(硫安の場合は約2.5g)を0.5リットルの水に溶かして灌水します。

(1)苗立枯病

苗立枯病の防除は予防が重要です。播種前に種子消毒や育苗箱消毒を確実に実施しておきましょう。
播種後に苗立枯病が発生した場合は、下記を参考に薬剤防除を行います。

【表1】苗立枯病の防除薬剤(例)
病原菌 症状 使用農薬の例(成分数) 使用時期 使用方法
フザリウム モミの周りに白ないしピンク色のカビが発生する。低温多湿で発生しやすい。 タチガレエース液剤(2) は種時又は芽後 育苗箱1箱当り希釈液(500~1000倍液)500mlを土壌灌注する。
ピシウム カビは発生しない。根が水浸状に褐変し、萎凋枯死する。坪枯れ状となる。低温で発生しやすい。
リゾープス 土の上に白いクモの巣状のカビが発生する。低温多湿で発生しやすい。 ダコニール1000(1) は種時から緑化期 但し、は種14日後まで 同上
トリコデルマ 地際部やモミの周りに青緑色のカビが発生する。30℃以上の高温で発生しやすい。 ベンレート水和剤(1) は種時とは種7日後頃の2回 同上

注意:特別栽培米等の減農薬栽培に取り組んでいる場合は、使用できる薬剤数(成分数)に制限があるので、農協等の関係機関に相談してください。

(2)ムレ苗(センコウ苗)

予防として下記1~3のいずれかの方法があります。

  1. 播種前にフジワン粒剤(苗箱1箱あたり15g)を床土へ混和する。
  2. は種時又は発芽後にタチガレエース液剤(500~1,000倍)を土壌灌注(苗箱1箱あたり500ml)します。
     ※タチガレエース液剤の使用回数は栽培期間内1回。
  3. 緑化始期にフジワン粒剤(苗箱1箱あたり25~50g)を散布します。また、ムレ苗が発生初期であれば、すぐに田植をすると回復します。

2 田植前後の管理

(1)田植えのポイント

田植前の耕うんは、深さ15cmを目標に行います。根がより深く・広く張り、夏期の高温対策にも有効です。
植付株数は坪当たり60~50株(30cm×18~22cm)が収量・品質面で安定しています。
近年、さらに株数を減らした疎植栽培も見受けられますが、天候不順の際は影響を受けやすくなるので注意が必要です。
株に植え付ける苗数は2~3本、植え付ける深さは2~3cmが理想です。

(2)粒剤箱施用による病害虫防除

【表2】を参考に、病害虫の予防をしましょう。

【縞葉枯病が増えています!】

近年、縞葉枯病(ゆうれい病)の発生が増加しています。ヒメトビウンカがウイルスを媒介して拡大する病気で、抵抗性を持たない品種(コシヒカリ、キヌヒカリなど)は感染すると、ゆうれい症状、枯死、穂の出すくみなどをおこします。
田植前に殺虫剤の箱施用を行っておくと、被害を軽減することができます。
※彩のかがやき、彩のみのりは、抵抗性を有しているため発病しません

【表2】育苗箱施薬による防除
薬剤名(成分数) 使用量 使用時期 適用病害虫
グランドオンコル粒剤(1) 50g/箱 移植3日前~移植当日 セジロウンカ、ヒメトビウンカ、イネシンガレセンチュウ、イネミズゾウムシ、イネドロオイムシ、ニカメイチュウ、ツマグロヨコバイ、イネツトムシ
デジタルコラトップアクタラ箱粒剤(2) 50g/箱 移植3日前~移植当日 いもち病、ウンカ類、イネミズゾウムシ、イネドロオイムシ、ツマグロヨコバイ
移植当日 イネクロカメムシ、ニカメイチュウ
ビームアドマイヤースピノ箱粒剤(3) 50g/箱 移植2日前~移植当日 いもち病、ウンカ類、イネミズゾウムシ、イネドロオイムシ、コブノメイガ、ニカメイチュウ、フタオビコヤガ、ツマグロヨコバイ、イネツトムシ

3 雑草防除

除草剤を使用した後は7日間湛水状態を維持し、その間は水があふれたり落水しないよう、適切な水管理に努めてください。なお、田植前の耕うんや代かきはていねいに行い、田面を均平に整えておくことが除草剤の効果を高めるポイントです。
苗の活着が悪いほ場や植え痛みが出たほ場は、使用時期を遅らせてください。また、気温が高くなると雑草の生育が早まり、使用時期の範囲内でも薬剤が効きにくくなるので注意しましょう。
一発処理剤で効果が不十分の場合は、草種に適した中期剤・後期剤との体系処理を行います。

4 施肥

基肥が過剰の場合、病害虫の多発や倒伏を助長するほか、食味の低下につながります。
品種に合わせた適正な施肥量を遵守しましょう。特にコシヒカリは倒伏しやすいので、基肥が多くなりすぎないように気を付けましょう。

標記の農薬の登録情報は平成24年4月6日現在のものです。
農薬の使用に際しては、ラベルを良く読み、使用量や使用時期、有効成分ごとの総使用回数などの使用基準を必ず守ってください。また、農薬の使用に当たっては、手袋、マスク等適切な保護具を使用するとともに、周辺の危被害防止にも注意してください。

一覧へ

【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。