水稲の中間管理(水管理・穂肥)

水稲の中間管理(水管理・穂肥)

5月の気温の変動が大きく、田植作業は遅れぎみになったものの、田植え後の活着や初期生育は概ね良好でした。
気象庁発表の3か月予報によると、「平年に比べ曇りや雨の日が多いでしょう」とのことです。このため、特に、いもち病等の病害虫の発生に注意し、適正な肥培管理で品質の向上を図りましょう。

1 水管理の徹底

中干しは、有効分けつ(1株おおよそ18~20本の茎数)を確保してから、行います。中干しの時期は5月中旬~下旬に田植えした稲で、移植後30~35日頃を目安にします。
その後の水管理については、幼穂形成~出穂前後20日間は水を切らさないように管理し、特に、出穂前後一週間は深水とします。穂揃い後25日間程度は間断かん水を行い、早期落水は避けます。
なお、台風の通過後には、時々、高温・乾燥の風が吹き籾擦れなどによる籾の褐変が発生しやすいので、このような天候が予想されるときには深水管理を心がけ、品質低下や倒伏を防止します。

2 穂肥について

穂肥は収量・品質・食味に大きく影響しますので適正な時期と施用量を守りましょう。
(1)穂肥時期は、幼穂の長さにより診断します。
(2)穂肥量は、葉色診断やヨードカリ反応により診断します。
葉色診断は葉色板を利用し、最長葉(展開葉の第2葉または3葉の中央部)を測定します。

【表1】穂肥施用時期の目安
品種 施用時期 幼穂の長さ 葉色(単葉) 施用量の目安*
コシヒカリ 出穂18日前 10~20mm 4.1~4.3 1.0~1.5kg
キヌヒカリ 出穂20~23日前 2~3mm 4.3~4.5 2kgを限度
彩のかがやき普通植 出穂25日前 0.5~1mm 4.0~4.3

(注意)彩のかがやき 出穂前20日以降は絶対に穂肥を施用しない。
※10a当たりの窒素成分量です。土壌条件により、施肥量を調節します。

3 病害虫防除

多雨寡照の気象条件が続く場合は、いもち病の発生に注意が必要です。いもち病は、20~25℃の平均気温が5日間続き、その後、稲の葉の湿った状態が10時間以上(その時の平均気温15~20℃)続く場合に発生しやすくなります。移植後の補植用苗も発生源となりますので、早急に処分しましょう。
また、例年発生が見られるほ場では必ず田の見回りを行い、初期病班の早期発見に努めましょう。

なお、いもち病の防除薬剤を含め、主な適用病害虫の防除農薬の例を次の表に記載しましたので参考にしてください。

【表2】病害虫防除農薬の例
区分 農薬名 10a当たり使用量、希釈倍率 使用時期 本剤の使用回数 適用病害虫
殺虫 パダンバッサ粒剤 3 ~ 4 kg 収穫30日前まで 5回以内 ウンカ類、イネツトムシ(注1)、ツマグロヨコバイ
スタークル粒剤 3 kg 収穫7日前まで 3回以内 カメムシ類(注2)、ウンカ類、ツマグロヨコバイ
殺虫殺菌 パダンオリゼメート粒剤 3 ~ 4 kg 収穫30日前まで 2回以内 いもち病、籾枯細菌病、イネツトムシ(注1)、ニカメイチュウ
イモチエーススタークル粒剤 3 kg 収穫35日前まで 1回 いもち病、紋枯病、ウンカ類、ツマグロヨコバイ、カメムシ類(注2)
殺菌 キタジンP粒剤 3 ~ 5 kg 葉いもちに対しては初発7日前~初発時。穂いもち、紋枯病に対しては出穂7日~20日前 2回以内 いもち病、紋枯病
イモチエース粒剤 3 kg 収穫35日前まで 1回 いもち病、紋枯病
モンカット水和剤 1000倍 収穫14日前まで 3回以内 紋枯病

※標記の農薬の登録情報は平成22年6月1日現在のものです。各薬剤別の適用病害虫については、この地域における主要なもののみ記載しており、登録上使用可能な病害虫を全て記載しているわけではありません。
また、水田への農薬散布後7日間は、環境保全や効果の安定化のため、落水・かけ流しをしないなど適切な「水管理」を実施しましょう。

注1 イネツトムシの防除時期の目安は7月下旬~8月上旬
注2 カメムシ類の防除時期の目安は出穂期~乳熟期です。カメムシ類は、畦畔や休耕田の雑草などに生息しています。草刈りは有効ですが、出穂前後2週間の草刈りはカメムシ類を水田に追い込むため避けましょう。

農薬の使用に際しては、ラベルを良く読み使用基準を守るとともに周辺への飛散防止にも注意してください。

●一口アドバイス●

 水田難防除雑草「クサネム」の対策について

 ―種子の成熟前までに抜き取り、ほ場外で処分します―

1 クサネムの種子について

クサネムはマメ科の一年生雑草で、黒色の種子が米粒大のためグレーダーで選別できずに玄米に混入することが問題となっています。
この雑草は、畦畔や湿地など適度に湿った条件で発芽します。水田では水中でも発芽し、開いた葉が浮き上がって水面を浮遊し、田面が露出した部分で定着・生育します。

2 対 策

(1)ほ場の均平と漏水を防止し、田面を露出させないようにします。
(2)発生ほ場ではクサネムの種の成熟前までに抜き取り、ほ場外で処分します。
(3)除草剤による防除について

  • クサネムの種子は休眠性で、ダラダラと発芽することから除草剤の体系処理(初中期一発剤+茎葉処理剤)が有効です。
  • 種子の寿命も長いため、1年で完全に枯殺ができないことがあります。
  • 草丈が大きくなると完全に枯殺できないので、散布適期を見逃さないようにします。
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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。