水稲育苗管理のポイント
水稲育苗管理のポイント
東松山農林振興センター
収量が多く品質の良い米づくりには、健全な苗が必要です。日々の温度条件に対応した栽培管理を行い、田植えに備えましょう。
1 床土の準備(立枯病防除)
床土に病原菌が侵入し、育苗中の苗に病気が広がる恐れがあります。
薬剤を使用して、立枯病を必ず防除しましょう。
2 育苗箱の消毒
育苗箱はイチバンやケミクロンGを使用して必ず消毒しましょう。
3 種子の準備
(1)種子更新
品種の特性を保ち、品質や収量の低下を防ぐため、種子更新を行いましょう。
(2)塩水選
塩水選は充実した種子を選抜するために行います。塩水選に用いる塩水は表1を参考に調整し、沈んだ種子のみを使用してください。塩水選後は種子をしっかり水洗いしましょう。
表1 種類別塩水比重と食塩量の目安
(3)種子の消毒
ア 温湯消毒を行う場合
60℃で10分間処理します。処理後は流水などで直ちに冷却してください。
イ 薬剤消毒を行う場合
殺虫剤(スミチオン乳剤など)と殺菌剤(テクリードCフロアブルなど)を併せて使用してください。
薬液の温度が低いと薬の効果が極端に落ちてしまいます。薬液の温度は10℃を下回らないよう管理しましょう。
(4)浸種
浸種は発芽に必要な水を種子に吸わせるために行います。
浸種する水温の目安は10~15℃です。積算温度(水温×浸種日数)はコシヒカリで120℃、他の品種で100℃以上必要です。
浸種中は、1日1回を目安に種子をよく撹拌し、水は2、3日に1回取り替えましょう。
ただし、薬剤を使用して種子消毒を行った場合は、薬の効果を保つため、最初の2、3日間は水を取り替えないでください。
(5)催芽
催芽は種子の出芽時期を揃えるために行います。
濡れむしろとビニールで包むなどの方法で24時間30℃を保ってください。
芽を伸ばしすぎると播種時に折れる恐れがあるため、図1のように適正なハトムネ状態になるよう管理しましょう。
図1 適正なハトムネ状態
4 播種作業
播種は晴天の日に行い、薄まきを心掛けてください(目安:乾もみで80~100g、催芽もみで100~125g程度)
5 播種後の温度・水管理
播種後は温度と水の管理が非常に大切です。
播種後は表2を参考に、時期に合わせた適切な温度管理をしましょう。
保温時は35℃以上の高温にならないよう、適宜中の様子を確認してください。
表2 時期ごとの温度管理の目安
過度なかん水は控え、かん水をする時はなるべく朝一番に行いましょう。
また、立枯病が発生した場合は、表3を参考に防除してください。
表3 立枯病の防除(農薬の登録情報は令和2年3月17日現在)
(1)出芽期(播種後2~3日)
ア 積み重ねる場合
育苗箱を積み重ねる枚数は、10枚程度が適切です。積み重ねた育苗箱は保温マットやむしろ、ビニール等を使って保温しましょう。
イ 苗代に出す場合
播種後すぐ苗代に出して出芽させる場合は、資材で被覆し温度を確保しましょう。
(2)緑化期(播種後4~10日)
昼間は寒冷紗で被覆し、高温になる場合は換気等で調整しましょう。
特に気温の低い日は、資材を活用し保温することが必要です。
また、夜間は低温に遭遇しないよう、資材で保温し15℃以下にならないようにしましょう。
過度なかん水は、根を冷やす原因になるので、土が乾いてからかん水してください。
(3)硬化期(播種後10日~田植え)
苗を徐々に外の環境に慣らすため、日中は外気や日光に十分当てるようにしましょう。
10℃以下の低温に遭遇するとしおれて枯れる恐れがあるので、寒い日は資材で被覆し保温することが必要です。
※農薬を使用する際はラベルをよく読み、記載されている使用基準を順守しましょう。
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。