シンボルツリーになるような家庭果樹を植えてみませんか

シンボルツリーになるような家庭果樹を植えてみませんか

皆さんの庭先には、カキやウメ、みかんなどの家庭果樹が植わっていることと思います。今回は、果樹でありながら庭木としても楽しめるような「花も実も楽しめ、シンボルツリーになるような樹姿の美しい果樹」の紹介をさせていただきます。

今回紹介するのは、①樹が大きくならず、②剪定管理が簡単で、③きれいな花が咲き、④おいしい実が採れ、⑤少し珍しい果樹です。ぜひ庭に植えてみてください。

【ジューンベリー】

バラ科ザイフリボク属の落葉樹です。名前が示すとおり、6月に実がなります。

ジューンベリーは、4月に葉が出るより先に開花します。その後に葉が出ますが、10cm以下の小さい葉で、しかも良く水をはじき、すっきりした樹姿と相まって雨時にはさわやかな景観が楽しめます。6月上旬には1cm弱で赤紫色の小さい果実が収穫できます。自家受粉するので1本植えでも大丈夫です。そして秋深まる11月頃に真っ赤に紅葉します。

品種は多くありますが、品種名まで書いて売っていることは少ないです。ただし品種によって花色や実の大きさなどが違うので、好みに合わせた品種を選びたいところです。

最も一般的なのはラマルキーという品種です。白色の花が咲き、果実は小さめですが実付きが良く、扱いやすい品種です。ロビンヒルという品種を選ぶと、ピンク色の花が楽しめ、果実もやや大きめになります。

樹高はどの品種でもおおむね2~3mに収めることができます。樹形は剪定方法によって、一本立ちにも株立ちにもできます(図1、2)。

果実の味は、酸味が無いのでやや締まりがないですが、生食でも加工でもおいしく楽しめます。

病害虫の被害を受けることはあまりありませんが、鳥がよく来ます。鳥よけをするか、被害を受ける前に収穫することがポイントです。

【照手水蜜(てるてすいみつ)】

バラ科モモ属の落葉樹、いわゆるモモです。ただしこの品種は枝垂れなのが特徴です。花桃には枝垂れの品種が多くありますが、おいしい実がつく品種は珍しいです。

「照手」とは神奈川県が育成した花桃の品種群で、そのうち「桃・姫・紅・白」は箒性直立の品種ですが、「水蜜」だけは、枝垂れで実がつく品種です。

モモの代表品種は白鳳などですが、家庭果樹として植えるには樹が大きくなりすぎ、管理も大変です。その点、この照手水蜜なら枝垂れなので剪定等の樹形管理が簡単で、コンパクトに維持できます(図3)。

照手水蜜は、4月に葉が出るより先に開花します。花はピンク色の半八重で、しかも枝垂れなので華やかです。モモは品種によっては1本では実を付けない物もありますが、照手水蜜は1本でも実がつきます。実付きはかなり良く、摘果をしないとならないほどです。

果実が収穫できるのは7月下旬です。果実の大きさは、白鳳が300g程度になるのに比べると残念ながら100g程度と小さいです。しかし糖度は12度以上あり、みずみずしくてとてもおいしいです。

欠点はモモであるため害虫が発生しやすいことです。特にシンクイムシが入ってしまうと食べることができなくなってしまうので対策が必要です。袋がけをするのも一つの手ですが、小さくて数が多いので少し大変です。

  • 201811-1
    ジューンベリー(ラマルキー)の花
  • 201811-2
    ジューンベリー(ラマルキー)の果実

201811-3
図1 ジューンベリーの剪定方法(1本立ち)

①②枝を伸ばしたいので、切り戻し剪定をする。
③④先端は切り戻して伸ばし、混んだ部分は間引き剪定とする。株元からはシュートが発生してくるが、1本立ちを維持するため除去する。
⑤ 勢いよく発生した徒長枝及び、混んだ部分の枝を除去し、樹姿を維持する。

201811-4
図2 ジューンベリーの剪定方法(株立ち)

①②枝を伸ばしたいので、切り戻し剪定をする。
③④先端はあまり伸ばしたくないため、間引き剪定とする。株元から発生するシュートは、株立ちの樹姿を目指すため、切り戻し剪定とする。
⑤ 混んだ部分や樹高の高い部分を間引き剪定し、樹姿を維持する。

  • 201811-5
    照手水蜜の花
  • 201811-6
    照手水蜜の果実
  • 201811-7
    照手水蜜の果実(左:白鳳 右:照手水蜜)

201811-8
図3 照手水蜜の剪定方法

①②③枝を伸ばしたいので、切り戻し剪定をする。枝垂れなので支柱を添えて立てておく。
④  伸ばしたい枝は、切り戻し剪定をして伸ばす。
⑤  5年で樹高2m程度になるので、支柱による誘引は終了させる。下部枝が弱くなるので、切り戻して勢いをつける。
⑥  上部枝が強くなって陰が大きくなるので、間引き剪定するとともに、下部枝は切り戻し剪定をして強くし、樹姿を維持する。

一覧へ

【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。