水稲の中間管理

水稲の中間管理

東松山農林振興センター

 

今年、5月23日発表の3ヶ月予報では6月~9月の気温は平年並か高い見込みです。

昨年は、6月、7月の高温多照による肥切れ、特に7月下旬から8月上旬の高温多照に登熟期があたった早期・早植栽培(5月植)では白未熟粒が多発し、検査等級が低くなりました。

昨年の反省と予報を踏まえて、高温対策などの栽培ポイントを参考にしてください。

 

近年では、幼穂形成期~登熟期頃の異常高温等によって、稲の品質や収量にも影響が見られるようになっています。

水管理と穂肥施用のポイントを確認し、暑さに負けない、品質の良いお米をつくりましょう。

 

1 水管理について

水管理は、根の活力を維持して高温による品質の低下を防ぐ重要な技術になります。

ここでは、中干し以降の管理について確認していきましょう。(図1)

 

 

(1)中干し

中干しには、①過剰分げつの抑制、②ほ場のガス抜き、③根の健全化、④耐倒伏性の向上などの効果があります。

中干しの開始は、おおよそ必要な分げつ数が確保されたら行います。期間は概ね1週間で、田面に小さな亀裂が入り、軽く足跡が付く程度とします。

特に「彩のきずな」では、茎数が増えやすく、充実不足や食味の低下に繋がるため、必ず中干しを実施しましょう。

水回り等の問題で、中干しができないほ場では、できる限り浅水管理を行いましょう。

 

(2)中干し後~穂ばらみ期

中干し後出穂20日前頃までは、間断かん水(足跡に水が溜まる程度まで減れば、水を入れる作業を繰り返す)を行うことで、適度な水分と酸素を供給し、根の活力を維持しましょう。

 

(3)穂ばらみ期~出穂期

出穂前後一週間は、イネが最も多くの水分を必要とする時期です。

水深5~7cm程度の深水管理を行いましょう。

 

(4)登熟期~収穫まで

基本的には間断かん水を行います。

また落水開始の目安は、出穂期から約30日後(収穫の7~10日前)です。

早期落水は充実不足や白未熟粒発生等の要因となるため避けましょう。

 

2 穂肥について

基肥で一発肥料を施用していない場合は、適切な時期に穂肥を施用することで高温下でも良好な光合成を行い、収量や品質を高めることができます。

穂肥には、穂の形成に必要な養分を与えることで、籾数を増やし、稔実歩合を向上させ、収量を増加させる目的があります。

 

また肥料が切れた状態で高温を受けるとコメの品質が悪くなります。

適切な穂肥の施用時期と施用量を決めるためには、幼穂の長さ、葉色を測定します(表1)。

 

 

(1)幼穂

田の畦から2m以上離れた平均的な生育をしている株の中で、一番草丈が大きい茎を抜いて、図2のように丁寧に剥き、茎の中にある幼穂の長さを測り、出穂前日数を調べます。

 
2023年7月_農作業_図2
 

(2)葉色

現在どの程度肥料が効いているかがわかり、穂肥の量の目安を調べます。

出穂15~10日前に葉色が4を下回った場合、さらに窒素成分で10aあたり2kg施用しましょう。

逆に葉色が濃い(4.5以上)場合、穂肥時期は遅らせるか施肥量を減らすなどの対応が必要となります。

 

一発肥料(肥効調節型肥料)の成分溶出は、著しい高温条件下では、肥効が穂肥時期まで持たず、肥切れするので注意してください。

JA埼玉中央が管内に18ヶ所の展示ほを設置しており、ここに穂肥施用の目安になる看板を設置するので参考にしてください。

展示ほの場所は、各営農経済センター及び各支店窓口に確認してください。

 

3 病害虫防除

(1)いもち病

中間管理の時期には、葉に紡錘状の病斑が現れる「葉いもち」が発生します。

葉いもちは、進展するとズリコミ症状(株全体が萎縮)が現れ、さらに「穂いもち」の発生にも繋がります。

いもち病は天候要因のほか、過剰な施肥でも発生が助長されます。

適正な量の施肥を心掛け、病気が発生してしまった場合は早期防除を行いましょう。

 

(2)ウンカ類

ウンカ類の防除は、育苗箱施用と本田防除が基本となります。

ヒメトビウンカが媒介する縞葉枯病に弱い品種(「コシヒカリ」等)を栽培しており、育苗箱でヒメトビウンカの防除を実施しなかった場合は注意しましょう。

 

(3)カメムシ類

品質低下を招く斑点米カメムシ類が多い地域では、地域ぐるみの雑草管理対策が重要です。

畦畔などほ場周辺の雑草防除は、冬季から出穂2週間前まで徹底し、カメムシ類の生息場所を減らしましょう。

なお、出穂2週間前以降のほ場周辺の草刈りは、斑点米カメムシ類を水田に追い込むことになるので避けましょう。

 

カメムシ類の発生が多い場合は、出穂期~乳熟期に2回対象農薬を散布しましょう。

農薬を使用する際には、必ず使用農薬のラベルを確認して適正に使用するとともに周辺への飛散防止にも注意してください。

 

2023年7月_農作業_表2
 

2023年7月_農作業_表3
 

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。