くりの低樹高栽培

くりの低樹高栽培

東松山農林振興センター

1 剪定の必要性

くりは、管理せず放任していると樹高が高くなり剪定等の作業がしにくいばかりか、結果枝が弱くなることや病害虫の発生も助長し、良品質な果実が結実しません。

また、くりは多くの太陽光を必要とすることから、まんべんなく枝葉に陽を当てるため樹形を開張させる必要があります。

このため、低樹高栽培が必須で、幼木期からの整枝管理によって目標とする樹形・樹高にするよう管理が必要です。なお、高木化しているものを切り下げて改善を図ることも重要です。

2 くりの樹形

くりは、新梢が勢いよく上に伸びる頂部優勢が強いことから、枝が直立し高木化しやすい特性を持っています。そこで、管理しやすいような樹形を作る必要があります。

(1)一般的な心抜きをする変則主幹形

変則主幹形は、図1のように中心に主幹を置き、3~4本の主枝を配置し、その後最上段の主枝まで主幹を切り下げる樹形です。主枝の配置がしやすく、収量も確保しやすい樹形です。

定植後の3~5年生程度の早い段階で主幹を切除すると、下部の枝が強くなり直立してきます。しかし、主幹を立てておくことで下部の枝が開張しやすくなります。よって、樹勢が落ち着いてくる7~8年生以降に主幹を切り下げる心抜きを行います。

201611-1
図1 変則主幹形

(2)心抜き開心自然形(2本主枝)

2本主枝の開心自然形は、樹高を低くできることから管理作業がしやすい樹形です。

幼木期から開張させる主枝を決めて誘引し樹形を作っていきますが、頂部優勢が強いことから主幹を直立させておき、樹勢が落ち着つく7~8年生以降に図2のように主幹を切り下げる心抜きを行います。

なお、2本主枝の場合は枝が少ないため主幹付近の樹勢が強くなりすぎる傾向があるため、主枝をそれぞれ2本に分岐させてX字型にします。

20161108102855.png
図2 心抜き開心自然形X字型

3 樹形改善

現在あるくりの木の樹高が高くなっている場合は、主幹を切り下げて低樹高化を図ります。切り下げの目安は変則主幹形に準じますが、残す枝は主枝の発達程度により勘案して決定します。

主枝が充実していない場合は、主枝の陽当たりを妨げている枝を優先して切り取り、主枝の充実を図ったうえで切り戻します。

4 枝の切り方

枝の切り方は2通りあり、切り返し剪定と間引き剪定があります。

(1)切り返し剪定

枝の途中を切ることを切り返し剪定といい、先端部を少し切ると弱剪定、枝の1/4~1/3程度まで切ると強剪定となります。枝を伸ばしたい場合は枝の樹勢を見ながら強弱を判断し、切る位置を決めます。

(2)間引き剪定

間引き剪定は、枝の分岐部から切り取って間引くことで、枝数を減らすときや樹形を整える場合に用います。

5 剪定と枝の作りかた

(1)主枝

どの樹形でも主枝はいちばん力強くまっすぐに伸ばします。先端枝は必ず1本に間引き剪定をし、先端部を強く切り返し新梢の発生を促します。

(2)亜主枝

主枝上に左右に各1本ずつ亜主枝を配置しますが、横から発生した枝を利用し、主枝と同じように先端を1本に間引き剪定して、先端部をやや弱めに剪定します。主枝より太くならないよう注意が必要です。

枝の先端付近には樹勢が同等な枝が数本発生します。そのまま残すと2股3股に枝分かれして樹形が乱れる原因となっている事例が多く見られます。

(3)側枝

主枝、亜主枝上に側枝を発生させますが、上面から発生した枝は徒長しやすく、主枝、亜主枝と競合し樹形を乱す原因となります。したがって、横面から発生した枝を利用します。

樹令が進むにつれ着果部が枝先に移行し、果実の肥大が不良となってきます。また、側枝が長大化し専有面積が増大して無着果部分が多くなってきます。そのため、側枝を切り戻し等で更新を行い、コンパクトに保つ必要があります。

枝を切ることによって、その切り口付近から新たな枝が発生します。積極的な枝の更新で、新たな枝を作っていくことを念頭に剪定しましょう。

(4)結果母枝

結果母枝から30cm程度の結果枝が発生し結実します。その枝が重なり合わないよう50~60cm間隔で配置し、多い場合は間引き剪定をしてください。

剪定で残す結果母枝数は、㎡当たり6~7本程度の密度です。

201611-2
図3 樹形と枝の名称

一覧へ

【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。