雇用の確保と農業経営の法人化について

雇用の確保と農業経営の法人化について

東松山農林振興センター

 

プロローグ

「ただいま、母さん就職先決まったよ!」

弾む息子の声。今、農業大学校に通っている。小さなころから農業に携わるのが夢だったが、どうやらそれがかなったようだ。

「なんていうところに就職するの?」

「○○さんち。頑張れば、将来後継者にも考えてくれるって言ってたよ。」

「・・・」

嬉しそうに語る息子の姿に、なぜか祝福する言葉が出てこない私。漠然とした不安や疑問が頭の中を駆け巡っている。

目の前では将来の夢を語り続けている息子。だけど、私の耳にはその言葉が全く入ってこなかった。

 

法人化相談の現状

東松山農林振興センターでは『農業経営法人化相談窓口』を設け、法人化の御相談をお受けしています。

最近の傾向としては、後継者確保や規模拡大のために雇用を確保したい。そのために法人化を考えているという相談が多くなっています。

『雇用確保のために法人化』とはどういうことでしょうか?

 

実は、法人でないと求人に対する申込みが集まらなかったり、採用しても定着しなかったりという実情があるからです。

そこで、就農希望者を送り出す側の農業大学校や専門家の先生に、就職就農※の現状をお聞きしました。すると、次のようなお答えをいただきました。

※個人でも法人でも、農業経営体に就職する場合を就職就農と呼んでいます。

 

農業大学校及び労務の専門家からの回答

・最近は農家子弟以外の就農希望者が多くなっている。

・こうした学生は、(自ら農業経営を始めるのではなく)農業経営体に就職することを希望することが多い。

・大学校の掲示板に掲示されている求人票の中でも、雇用環境が整備されていない職場に就職しようという学生は、皆無に近い(雇用するためには、必須条件)。

 

このように、雇用を確保するためには雇用環境の整備が最低条件であることがわかります。

そこで、雇用確保のために法人化という相談が増えてきているのです。

 

法人化のメリット・デメリット

もし法人化した場合、どんなメリット・デメリットがあるのでしょう。

実は経営体によって千差万別です。ここまで述べた雇用の確保以外にも、こんなことがメリットとして挙げられています。

・株式会社にしておけば、株式譲渡で円滑に後継者への経営移譲ができる

・法人化することで、大手流通業者と直接の取引ができるようになる

・制度資金の借入枠が大幅に拡大する

このほか、飲み屋に行ったとき、代表取締役の名刺を置いてくることができる・・・なんてことも人によってはメリットと思うことがあるかもしれません。

 

一方、法人化すると、一般に次のような労働環境を整備することになります。

・社会保険・労働保険の加入

・就業規則を定め、規律ある雇用環境を整備(常時雇用10名以上の場合は作成義務が発生)

・(就業規則の中で)有給休暇取得の明文化

また税制面では、赤字経営であっても法人住民税均等割(7万円)が課税されます。

こうしたことが負担となり、デメリットと感じられるかもしれません。

 

安心して働ける職場の提供

さて、冒頭のやり取りですが、就職にあたって個人の農家で働く場合、御本人や親御さんに漠然とした不安が発生します。

もしこれから誰かを雇って働いてもらおうと考えるのであれば、法人化するしないに関わらず、自分の子どもでも働かせたいと思える環境を作ることが大事です。

 

そのためには、

①社会保険、労働保険の完備

②安全面、衛生面等、気持ちよく働ける環境を提供(特に女性用トイレの整備は最優先と言われます)

③経営計画の策定と従業員への提示

④ ③と併せ、雇用者がどんな未来を描けるのか(役員待遇、後継者等)を提示

といったような事柄が挙げられます。

 

実際、このような環境を整備するのは負担が大きいかもしれません。しかし、長い目で見れば、継続的に働いてもらえ、また、経験を積むことで効率よく仕事を進めてくれるようになります。

さらに『働きやすい会社』という地元での評判は、無視できないPR効果となります。

結局は、みんなが安心して気持ちよく働ける環境を提供することは、自分の経営の安定・発展につながっていきます。

 

農業経営の法人化手順

最後になりますが、法人化の相談とは、どんな流れになるのでしょうか?

農林振興センターに相談した場合を例にとって御紹介します。

①農林振興センターの相談窓口に連絡し、担当者と面談する。

②面談の結果、法人化を前向きに検討することとなった場合、県から重点指導農業者に選定される。

③中小企業診断士や社会保険労務士、税理士など専門家のアドバイスを受け、法人化の検討を進める。

④検討の結果、法人化を進めることとなったら、さらに専門家の支援を受けながら必要な準備を行う。

《必要な準備には、定款作成等の形式的な準備だけではなく、法人の『中身』となる経営理念や経営計画などをしっかり練り上げることも含みます。》

⑤法務局での法人登記など、関係機関に届出、申請を行い、法人設立終了。

 

法人化後は、農地や経営資金の確保を進めるなど、経営計画に沿って事業を進めていくことになります。

雇用を確保しての経営発展を目指す方、後継者への事業継承をお考えの方、農業経営の法人化を検討してみてはいかがでしょうか。

 

法人化相談窓口

このコラムを見て『法人化について少しでも興味を持たれた方』は、東松山農林振興センターの『農業経営法人化相談窓口』までお気軽に御連絡ください。

●0493-23-8582

 

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