小麦の新品種「さとのそら」の栽培ポイント

小麦の新品種「さとのそら」の栽培ポイント

これまで県内で主力品種として栽培されていた「農林61号」は、汎用性が高い反面、冬期の気象変動により作柄が安定しない傾向にありました。近年、「農林61号」と同等の品質を有し、栽培性に優れた新品種「さとのそら」への品種転換が関東各県で推進されています。

比企管内でも平成25年秋播き(平成26年産)から品種が変更されました。本年度は作付2年目となりますので、昨年度の反省を生かし、平成26年産を上回る小麦を生産しましょう。

1 「さとのそら」の特徴

農林61号に比べて、以下の特徴があります。

    • 出芽~茎立ちまでの生育が穏やかで、茎立ちが遅い。
    • 出穂期、成熟期は2~3日程度早い。
  • 穂数が多く、多収(1割程度)。
  • 稈長は10cm程度短く、耐倒伏性に優れる。
  • 千粒重はやや優れ、容積重は同程度である。
  • 縞萎縮病抵抗性は強、赤かび病抵抗性は中、うどんこ病抵抗性は強、赤さび病抵抗性は中である。

※赤かび病抵抗性は中程度ですので、適期防除を徹底しましょう。適期は出穂期(全茎の40~50%が出穂した日)から7~10日後(開花期)です。

 図1 さとのそら栽培歴

201410-1

2 栽培

(1)播種前作業
~発芽を良くし、除草剤を上手に効かせるために!!~
  • 土づくり
    堆きゅう肥、稲わら等を施用し、地力維持に努めます。(堆きゅう肥を施用する場合は1t/10aを目安とします。)
  • 耕耘整地
    土壌水分の多い時は、荒起こしを行い、土の乾燥を早め、乾いたら丁寧に砕土、整地します。砕土率が低いと苗立率の低下や除草剤の効果が劣り、薬害も発生しやすくなります。
(2)施肥
~肥料を良く吸収する品種なので基肥量、特に追肥がポイント!!~
  • 基肥
    目安は窒素成分で6kg/10aです。
  • 追肥
    出穂2週間前の4月上旬に窒素成分で4~6kg/10aを基本とするが、4月上旬は茎立ち後であるため、追肥作業が困難な場合は茎立ち直前(3月上中旬)に窒素成分で3~4kg/10aの追肥とします。
  • 一発施肥
    緩効性肥料を用いた一発肥料では窒素成分で10~12kg/10aを目安とします。なお、追肥時期の生育を見て、肥料切れを起こしている場合は追肥をします。

※平成26年産は、4月ごろから帯状に色落ちしたほ場が散見されました。追肥による対策を行ったところ、出穂期までに回復したことから、部分的に窒素成分が不足していたことが原因であると考えられます。性質上、「さとのそら」は「農林61号」に比べ、分げつが多く、窒素の吸収量が多いため、このような現象が発生する可能性があると考えられます。このような症状がみられた場合には、早期に追肥を行ってください。

(3)播種
~適期(11月中下旬)に適正な播種量で播種し、苗立ち数は100~150本/㎡を目標に!!~
  • 播種時期
    早すぎる播種は過繁茂→凋落型の生育になりやすく、遅い播種は分げつの遅れから穂数が減少する、弱小穂が多くなりやすい等、収量および品質に悪影響を与えます。
  • 播種量
    目安は5~7kg/10aです。「さとのそら」は「農林61号」に比べ、分げつを確保しやすい品種のため「農林61号」よりも少なくします。過剰な苗立ちは過繁茂→凋落型の生育になりやすく、収量、品質に悪影響を与えるので播き過ぎに注意しましょう。
  • 播種深度
    発芽、分げつを確保するために2~3cmを厳守します。深播きは初期分げつの抑制など生育に著しい悪影響を与えます。
(4)明きょの設置
~発芽不良や刈遅れを防ぐため、排水対策をしよう!!~

発芽不良や湿害、刈り取り作業の遅れを防ぐためには、降雨後の表面水の速やかな排出が重要です。このため、ほ場を均平にし、必ずほ場周囲及びほ場内5~10m間隔で排水溝を作ります。播種後、麦の茎立ち前までであれば、明きょ設置作業が可能であるので、作業の都合で播種直後の作業が無理な場合でも、その後できるだけ早く設置するようにします。

※平成26年産は、2月の大雪によって、ほ場内の窪んでいる部分や外縁部に雪が溜まり、その結果根が弱り、その後の成長及び子実収量に大きく影響しました。

(5)踏圧

麦が3葉期を過ぎたら実施します。2週間以上の間隔をあけて、3回以上の実施が望まれます。
特に早播や暖冬年では踏圧回数を増やします。

(6)雑草防除
~3月上旬にかけて適期防除の徹底を~

播種前:播種前にロロックス、トレファノサイド等の土壌処理剤で雑草の発芽を抑えます。
播種後:雑草を早期発見し、適期にアクチノール等の茎葉処理剤で枯らします。

※平成26年産は、2月の大雪で薬剤散布の時期を逃し、ヤエムグラ等の多発したほ場が見られました。

(7)収穫
~適期(穂がわん曲し始めた頃)に収穫しよう!!~

穂がわん曲し始めた頃が収穫適期で成熟期後3~4日頃です。成熟期とは葉や穂首部分が黄化し、穂軸や粒は緑色がぬけ、粒にはツメ跡が僅かにつくぐらいの堅さに達した頃のことです。

201310※平成26年産は、6月上旬の記録的な豪雨で、コンバインがほ場に入れない等の理由による、収穫の遅れが目立ちました。刈遅れは小麦の重要な品質構成要素である「容積重」に大きく影響し、品質を悪化させますので、本年度は適期収穫を心がけるようにしましょう。

★農薬散布をする場合は、散布方法等を各薬剤のラベル等で確認し、飛散に注意して安全使用に努めましょう。

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。