ハナモモについて
ハナモモについて
東松山農林振興センター
東秩父村、小川町は、節句向けハナモモをはじめとする枝もの産地です。本来、モモの花は3月下旬に自然開花しますが、桃の節句の3月3日に間に合わせるために、収穫後加温して花を咲かせる作業を行っています。今月は、ハナモモづくりのポイントについてご紹介します。
1 樹の肥培管理
(1)整枝・せん定
収穫する樹は、①風通しがよくなるように②内部まで光がよく入るように間引きせん定を行います。2年に1回収穫する場合の適期は2~3月、毎年収穫する場合は6~7月です。
(2)施肥
定植10年以上の樹は、窒素・リン酸・加里を各10~12kg/10aを目安に施用してください。
定植10年までの樹は2割減を目安に施用してください。
(3)病害虫防除
病害虫と防除適期・使用薬剤の例については表1の通りです。
表1 病害虫防除(農薬登録は11月15日現在)
2 収穫管理
(1)枝切のタイミング
出荷予定時期から、水揚げ~促成~ならしの日数(10~14日)を逆算して枝を切ります。この日数は、収穫時期の早晩、収穫時点での花芽の進み具合によって変わってきます。
実際の花芽と出荷予定日までの気温・天候等を見ながら、多少余裕をもって作業をしましょう。
(2)枝の切り方
翌年以降の生育を考慮し、枝の基部を5~10cm樹幹側に残して収穫します。(写真1)
写真1 枝の切り方
(3)枝選び・束ね方
花芽の付き具合をよく確認し、花とびの無い、花芽の多い枝を揃えてひと束にしましょう。少しの手間が、品質向上につながります。
ご自分が、「これなら買いたい」と思うような束をつくりましょう。
また、日陰と日向、樹冠の上部と下部など環境が異なると、花芽の付き具合や進み具合が違います。似たような環境の枝を組み合わせると、花芽が揃いやすいです。
(4)結束・水揚げ
規格にあわせて、長さを揃えて結束します。
結束したら、その日のうちに水揚げを始めます。
水揚げは、3~4日しっかり行います。(写真2)
写真2 水揚げの様子
3 促成の方法
しっかり水揚げをした束は、開花に適した温度・湿度・暗黒条件の環境で、花芽を膨らませます。加温・保温が可能な設備のある、ハウスや物置などを利用した促成室で行われることが多いです。(写真3)
写真3 促成の様子
(1)温湿度管理
温度は20℃前後を保ち温度変化がなるべく無いようにします。上限25℃・下限15℃で管理しますが、温度変化が大きいと花の色が変わるなどの障害がおきることがあります。
湿度は、80~90%を保ちます。外気温の低下や、天候によって湿度が上がる場合があるので、注意します。湿度が上がらない場合は、床に打ち水をします。
空間内の温度が均一になるように、また、結露によるカビの発生を防ぐために、循環扇等で空気を動かしましょう。
(2)暗黒条件
促成に光は必要ありません。光があると、葉芽が動き、緑色が目立ちます。
ハウスを利用する場合には、遮光資材などで覆います。
(3)促成期間
花芽の進み具合によって違いますが、おおよそ5~7日で蕾が膨らみ、あと数日で開花する状態になります。この時点で、花芽の上から下まで全体に揃っていれば、上手に管理できていることになります。
4 ならし
出荷の2~3日前には、風の当たらない場所へ移して外気にならします。夜間5~10℃を保ちましょう。急激な温度変化や水切れは、花の色が変わることがあります。
ならしに移す場合は、できれば昼の暖かい時間に行うとよいでしょう。
5 家庭での楽しみ方
家庭で楽しむためのポイントをご紹介します。
(1)吸水
飾る前に枝を切り戻して、新しい切り口から吸水させます。
細い枝は斜めに切り、太い枝は十文字に切ると良く吸水します。
(2)乾燥防止
乾燥すると、花の色が変わったり、萎れてしまうことがあります。
朝晩、枝や花全体に霧吹きをかけたりして、湿度を保ちましょう。
また、エアコンなど暖房機の風が直接あたらないようにしましょう。
(3)鮮度保持
切り花用鮮度保持剤などを利用して、栄養を与えます。
花を咲かせるためには、枝に残っている養分を使いますが、収穫からの時間と、移動距離のために枝が消耗していることがあります。
一般的な鮮度保持剤には、糖分と殺菌剤が入っていて、花を咲かせるためのエネルギーを補給し、雑菌の繁殖を防いでくれます。
(4)温度管理
開花するまでは暖かい場所で、開花してからは、涼しい場所に置きましょう。
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。