電気柵、正しく使って獣害対策

電気柵、正しく使って獣害対策

東松山農林振興センター

 

今や、アライグマやハクビシン等の中型動物の農作物被害は、どこでも起こっています。

最近は、シカやイノシシの大型獣が山から河川沿いに、平地にも頻繁に出没するようになりました。

写真は荒川河川敷で昼間、稲刈り最中に出没したシカです。鳥獣被害は他人事とは思わず、対策について関心を持って、対策を試みてください。

荒川河川敷に出没したシカ
写真 荒川河川敷に出没したシカ

 

電気柵はシカ、イノシシ、アライグマ、ハクビシンなどの野生動物の獣害対策として効果的な対策で、

管内でも設置が増えています。電気柵を正しく使って農作物を守りましょう。

電気柵は、動物が最初に触れたとき、電気ショックを与えることで、「これは危険なものだ」と学習させることが肝心です。

通電していない電気柵に触れて、「これは触れても大丈夫なもの」と学習してしまうと、次からは柵を通り抜けるようになってしまいます。

効果を発揮させるため、作物の少ない冬から、春夏の収穫時期に向けた、電気柵の管理について再確認しましょう。

1 電気柵は張りっぱなしにしない

収穫が終わり、必要がなくなった電気柵は片づける。

電気柵を張っている間は、動物に学習させるため常に通電しておく。

 

2 使用前に通電するか確認(テスターで電圧確認)

電源別に次の点に注意しましょう。

①乾電池式

電池切れと電圧低下に注意。電池残量が少ないと電圧が低下する。

保管する時は電池を取り外す(乾電池液漏れの原因)。

②ソーラーパネル式(ソーラー専用バッテリー併用での使用)

バッテリーランプの表示が正常か確認する。

ソーラーパネルは、直射日光が良く当たるように南向きに設置する。

ソーラーパネル表面の汚れやゴミは取り除く(無理な力は加えない)。

使用後は、取り外したバッテリーを充電した後に冷暗所で保管する。

再使用する前にバッテリーを充電する。バッテリーを充電しても改善されない場合は、劣化しているので交換する。

3 電気柵の正しい設置の仕方(図1)

①設置したその日から通電

②1日中通電させる

野生動物のほとんどは夜も昼も行動している。

③漏電しないように、電気柵周辺はきれいに保つ

電線が草や地面、金属などに触れると漏電する。

除草剤等を使用して雑草対策をする。

④動物の種類によって電気柵の張る高さ、段数を変える

下の電線は動物が潜り抜けない高さ、

上の電線は動物が探査して鼻などで触りやすい高さにする。

 

動物別の電気柵の設置
図1 動物別の電気柵の設置(高さと段数)

 

鳥類の対策

獣害被害と比較すると、野生鳥類による農作物の被害は少ないですが、

ヒヨドリ、カラス、ムクドリ、ハトなどによる野菜、果樹などの農作物被害があります。

被害は年による変動があり、ヒヨドリは自然の木の実の量と関連があるようです。

また、ヒヨドリは冬場に収穫後のブロッコリー残さの葉を食べた後、

キャベツやのらぼう菜が食害されるなど、

農作物の残さや収穫しない果樹がエサになって鳥類を呼び寄せています。

 

1 防鳥ネット(表)

空から侵入する鳥を防ぐには、ネット等で作物全体を覆うことが有効です。

しかし、ほ場の規模や作物の種類によっては設置コストや管理労力がかかります。

 

ネットは地面と隙間がないように設置し、作物との間には十分な間隔をあけましょう。

 

対象鳥種別の網目選択
表 対象鳥種別の網目選択

2 テグス、糸、針金等

防鳥ネットのように完全に被害を防止することはできませんが、

農地に糸状のものを張ることで、カラスの侵入防止効果が期待できます。

カラス対策における設置のポイントは、

鳥が翼を広げた長さ(約1m)間隔で張ることです。

学習能力の高いカラスに見えにくい黒いテグスを使用するとより効果的です。

 

(参考)黒いテグスを利用したカラス撃退方法(図2)

 

県農業技術研究センター鳥獣害防除研究チームの

「黒いテグスを利用したカラス撃退方法」を紹介します。

詳しくは、埼玉県農業技術研究センターホームページを参照してください。

 

設置のポイント

①見えにくい黒いテグス使用
②設置のタイミングが重要
作物が熟期を迎える前に設置しておく。
③ほ場周囲にネットを張る
カラスは脇から歩いてほ場に入って来るので、ほ場の周囲にネットを張る。
④電気柵「楽落くん」と併設することで中型動物による被害も防ぐ。

 

トウモロコシ畑での設置イメージ
図2 トウモロコシ畑での設置イメージ

 

3 忌避剤

鳥類の嫌がる化学物質(登録農薬)を利用して、は種前の種子に処理する。

 

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。