いちごの育苗および本ぽの管理について

いちごの育苗および本ぽの管理について

1 うどんこ病に要注意

いちごのうどんこ病はいちごにしか感染しません。また、比較的、低温(二十五℃)で多湿の条件を好むため、例年、梅雨時期に発生します。暑さは苦手なので、盛夏期には一度、病徴がおさまりますが、本ぽに定植後、特に保温開始後にハウス内の湿度が高くなるため、再発します。したがって育苗期間中にしっかり防除し、病原菌をハウスに持ち込まないことが、本ぽでの発病を抑えるポイントとなります。

うどんこ病に感染した株は、写真1のように、葉がスプーン状になり、やがて白い粉状の病斑が観察できるようになります。病斑が見えなくても、葉が写真のようになり、遠くからでも目視できるようになったら、ほぼ間違いなくうどんこ病に感染しています。

うどんこ病の発病を助長する条件は梅雨のほかにもうひとつあります。それは、窒素過多です。ランナーをたくさん出させようと思って、親株に追肥をしたばかりに、うどんこ病を出してしまったという例に、幾度となく出会いました。特に、当地域の主力品種であるとちおとめは、養水分を吸収する根の量が多いため、ちょっとした追肥でも、窒素過多になりやすく、その分、うどんこ病の発病頻度が高いのです。

したがって、親株への追肥は、葉色が濃い場合や、ランナー及び葉柄が赤くならないうちは行わないでください。

また過度の追肥は逆に根を痛め、チップバーン(葉先枯れ症状)の原因にもなりますので注意してください。

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写真1 うどんこ病に感染した苗

2 チップバーン発生のからくり

先にも書きましたが、根痛みはチップバーンを引き起こす要因となりますので、特に肥料焼けには注意が必要です。

また、親株をプランターに植えてランナーを発生させている場合、限られた根圏で、養水分や、酸素の吸収を行っていますので、過乾、過湿、肥料過多による根痛みは最もチップバーンを引き起こす要因となります。また、生育が旺盛になり過ぎ、地上部で盛んに蒸散が行われているのに対し、根からの水分供給が間に合わない場合も、チップバーンの発生につながります。

いずれの場合でも、チップバーンを起こしている部位を調べると、カルシウムが不足していることが分かっています。カルシウムは、高温条件になると溶解しづらくなることが知られており、土壌に存在していても、いちごが吸収できない形になっている可能性があります。そんな時に、根痛みや蒸散過多を招くと、たちまちカルシウム欠乏が若い芽に生じ、葉が展開する時には、葉先枯れの症状を呈することになります。チップバーンが心配な場合は、カルシウム剤の定期的な葉面散布を行いましょう。

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写真2 ランナーに発生したチップバーン

3 雑草が炭そ病の発生源になっている

いちごの炭そ病菌は、オニノゲシ(写真3)やツユクサなどの雑草を中間寄主とし、雨粒等の水滴の飛散で伝播することがわかっています。これらの雑草は、私たちのいちごの育苗環境には、ごく普通に見受けられます。今一度、ほ場周辺の雑草防除に努めてください。またその際、アブラムシ類やハダニ類が雑草に生息している可能性もありますので、除草の前に殺虫・殺ダニ剤を散布することも大切です。

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写真3 オニノゲシの炭そ病斑とそこから分離した炭そ病の胞子

4 排水不良の土壌に粗大有機物は禁物

昨年の秋、本ぽにいちご苗を定植した後、萎凋症状が発生したほ場が多くありました。調べた結果、どのほ場からも共通して見られたのはピシウム菌でした(写真4)。これは降雨が多く、土壌水分過多の年に多く見られる菌です。

昨年は、8月の中旬以降、雨が多く、適期に定植できないほ場も多くありました。その際、ほ場に粗大有機物が多く含まれていると、水分過多になった時に、土壌中の酸素が有機物を分解する微生物に使われてしまい、定植したいちごの根が酸欠となってしまいます。そうして弱った根にピシウム菌が侵入し、萎凋症状を発生させたと考えられました。

排水が悪く、水分過多になりやすいほ場では、いちごの残渣を持ち出すとともに、粗大有機物の施用は極力行わないよう注意してください。

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写真4 いちごの根から分離したピシウム菌(矢印)

5 花芽検鏡のすすめ

花芽検鏡は、定植適期を把握するために大切なことです。定植時期が7日遅れることで、収量が15%減少したという報告もあります。適期定植に努めるとともに、早めの定植準備を心がけましょう。

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。